人気ブログランキング | 話題のタグを見る

航海日誌


by pacific_project
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31

「働きマン(1)」を読んだ

安野モヨコ「働きマン(1)」(講談社、2004年)を読んだ。

これは、現在の日本の社会でちゃんと働くことを肯定しようとする漫画だ。主人公松方弘子(28歳)は世界的に売れる雑誌をつくりたいという野望をもっている編集者。仕事モードになると「男スイッチ」が入って、恋愛も衣食睡眠もそっちのけで完全な仕事人間と化す。この松方を軸に、編集長や上司、同僚や後輩、松方の恋人のそれぞれの仕事ぶりが描かれる。

最初の章「女の働きマン」からの引用。仕事は「やりたい事をのんびりと、楽しくやる」のがモットーだが、まだ社内で使い物になっていない新人田中邦男(22歳)と松方とのやりとり。

田中「オレは『仕事しかない人生だった』そんなふうに思って死ぬのはごめんですね」
それもある/それも多分あって/確かにそのとおり/でも
松方「あたしは仕事したな――って思って死にたい」
一方を否定するのではなく、態度を書き分けながらも何かを伝えようとしている。「ハッピーマニア」では、タカハシ以外の男キャラクターのだめさを斬ったまま放っていた著者だけれど、この作品では人物それぞれに愛情を注いでいる。田中はまだほんのさわりで、この後働くことの哀しさを痛感しながらそれでも働く女たち、男たちが続々と登場する。缶コーヒーのCMでは決して表現し尽くせない、働く現場のリアリティがある。

松方が新しく担当になった小説家に、それまでの作風とはまったく趣の異なる作品を提案し、話題の作品をつくる「振り向きマン」の章が特によかった。過去にとらわれずに目の前の仕事に全力を尽くすことで進んでいく著者の前向きな態度を感じた。主人公の松方、職業こそ違うが親友のSと性格がそっくりで(本人も否定しないと思う)、他人とは思えない。次巻が楽しみ。
by pacific_project | 2004-12-27 03:05 | 読書